三峡(Sanxia/Three Gorges)2002.7/1989.3

 


船は夕闇と共に重慶を出発。


豊都の街はダムに沈む。この看板の線までが水の底になるらしく、引っ越しの準備も大詰めだった。


石宝寨。


外観だけは立派な観光船。メンテナンスをやっていないので中はドブの臭いがする。


船のデッキでくつろぐ人々。何故半裸なのか、それは冷房が全く効かないから。


三峡下りの典型的な景色。


そして夕暮れ。もうすぐ宜昌に到着するので心の底からほっとした。二泊は長いのでけっこう飽きる。

■三峡について■
中国で一番長い川、長江(揚子江)を重慶から武漢まで船で下るという有名なアトラクションがあります。この間、船は深い峡谷の中を通り抜け、迫力のある景色を見ることができます。
ところが現在、宜昌の近くで長江を堰き止める巨大ダムが建設中で、この景色はダムの底に沈んでしまいます。ダムの完成は2009年の予定ですが、既に水の底に沈む街の人々は大規模な引っ越しを始めています。2002年11月から水位が徐々に上がり、2003年には船の通行も一時出来なくなるそうです。

景色が見られなくなるという事で1997年頃から三峡下りは大ブームを巻き起こしました。新しい船がゾクゾク建造され、観光施設も整備され、観光客がわんさと集まりました。あまりに人が来ちゃったので、国が「すぐに見れなくなるわけではなく、しばらくは大丈夫」という通達を出すほどだったそうです。2002年になり、いよいよ水没が始まるというので今回あわてて見に行ってきました。思ったほど観光客はいませんでしたが、流域の住民は「これが最後の儲け時」とばかりに大ハッスルしていました。


■見所■
今後三峡はどのような風景になるのか、観光に値するのか、全く予想ができません。 流域には数々の観光名所がありますが、どこが沈んでどこが残るかはよくわかりません。2002年現在、観光船が停泊するのは以下の名勝です。

●豊都---別名「鬼城」と呼ばれる街で、鬼の故郷と言われています。山の斜面にへばりつくように街があり、その山の頂上付近に巨大な鬼のモニュメントがあります。その山は名山公園という公園になっていてその中には道教の寺もあります。入場料60元です。金が勿体なかったので街の中を歩くに留めておきました。古い町で雰囲気もいいのですが、ダムによって水没する事になっています。
●石宝寨---写真のような建物があります。川辺に建っているので沈みそうですね。
●張飛廟---三国志の英雄、張飛を祀ってある所です。これも沈むかな。入場料20元。
●白帝城---奉節という街にある城です。三国志の英雄・劉備が死んだ所として有名です。李白の詩で
 朝辞白帝彩雲間
 千里江陵一日還
 両岸猿声啼不住
 軽舟己過万重山
というのがありますが、ここの事を歌った詩です。三峡の入り口でもあるので船は危険を避けるためここに停泊して、朝日とともに出航していきます。
●三峡---川下り全体を称して三峡下りと言いますが、厳密には白帝城から宜昌までの間に三つの峡谷があってそこが三峡です。
●小三峡---巫山という街にある観光地です。長江に流れ込む川を小船でさかのぼるとスゴイ峡谷があるそうです。行かなかったんでよくわからないですが、行った人によると仁義なきボッタクリに遭ったそうです。
●ダム建設現場---山の中をくねくねと一日かけて下ってくると夕刻に三峡ダムの建設現場を通ります。「本当に2003年にせき止めが完了するのか?あと百年かかりそうだゼ!」と乗客はみんな感じているみたいですが口に出して言うのは止めときましょう。

船は以上の所に停泊しながら二泊三日または一泊二日で宜昌の街に到着します。 大体の人はここで降ります。もう一泊すると武漢まで行きますが、宜昌でバスに乗り換えると4時間で武漢に着いちゃうのです。但し、宜昌には夜着くのでその日の内に武漢に入るのはちょっと怖いかも。宜昌の船着き場には沢山の客引きが待っていてバスに乗せようとしていますが、なんかガラ悪いです。


■船■
船には色々な種類があります。普通の定期船、観光船、プール付きの超豪華観光船まで。値段もバラバラ。観光船の切符は重慶市内の全ての旅行会社で扱っています。一等、二等、三等、四等などがありますが二等がいいと思います。四等はデッキで寝なければなりません。私は朝天門大酒店の下にある重慶港客運站の切符売り場で買いました。宜昌まで二等で482元。入場料とガイドが付くと200元プラスになります。船には朝出発で一泊二日のものと夜出発で二泊三日のものがあります。また切符売り場には立派なパンフレットが置いてありますが、何年も前の、船が新品だった頃の写真を信用して期待しないように。100%裏切られます。
今後観光船がどうなるか予想できませんが、この路線は鉄道や飛行機と並んで重要な庶民の足になっていて、重慶から移動するときには役に立つ交通手段であることには変わりないでしょう。