重慶から武漢までの船旅は有名な三峡下りが楽しめます。
船に乗り込んでうろうろしていると変なオッサンに呼び止められました。写真を撮ってくれというので仕方なく一枚撮ってあげました。
オッサンはとてもうれしそうに去って行き、しばらくしたら友達を連れて来ました。写 真を撮ってくれと言います。仕方なく、三人まとめて撮ってあげます。
すると「いくらだ?」と聞いて来ます。どうやらカメラを下げてうろうろしてたので写 真屋さんと間違えられたようです。説明すると目を丸くして驚いていました。かなりの田舎者なのでしょう、三人揃って人民服を着ています。
上の写真(左)は船の中で友達になった乗客の周君です。周君は船に乗り込むなり乗務員の徐君を捜し出し、挨拶をしました。友達の友達の友達のようです。
中国はご存じの通りコネ社会です。周君は三日間の船旅をより快適に過ごすために、乗船一番に乗務員の徐君に挨拶したのでした。
周君と仲良くなった僕にとってもこのコネは大変役に立ちました。まず周君は僕をシャワーに連れていってくれました。時間外なのか、それとも乗務員専用なのか、シャワーはガラガラで、ホットウォーターがじゃんじゃん出ました。有り難いことです。周君は三回も体を洗っていました。
夜になると周君は僕をダンスパーティーに連れていってくれました。本当は入場料が要るのですが、徐君のおかげでタダでした。しかも徐君がパートナー(乗務員のお姐さんでとても美人です)まで選んでくれます。ああ、この時ばかりは社交ダンスを覚えておくんだったと後悔しました。僕はこのパートナーに引きずられる様に少しだけ踊り、すぐに逃げ帰ってしまいました。
朝になると、徐君は朝御飯を持ってきてくれました(タダです)。中国人はみんな食料持参で来ていて、僕は昨日からほとんど何も食べていなかったのです。朝だけでなく、昼飯と晩飯も毎食持ってきてくれました。これは有り難い。
周君と筆談を交えて話をします。彼は上海で専門学校の先生をしているそうです。彼は紙切れの端に「Marx theory
is wrong」と書いて川に捨てました。中国が遅れているのは政治のせいだとハッキリ言います。周君は途中の宜昌で下船しました。
徐君と話をします。彼はなかなかの美男子です。「このジャケットは日本製なんだ」と自慢げに見せてくれたタグには「MEN'Sモダン」と書いてありました。可哀想なので「これは日本で買っても二万円はするよ」と言っておきました。
武漢の街に着くと、徐君は僕に小篭包をおごってくれました。僕も彼にタバコとカセットをプレゼントしました。
後日、日本に周君と徐君、それぞれから手紙をもらいました。どちらの手紙にも「日本に留学したいので保証人になって欲しい」と書いてありました。
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