これでも喰らえ!●1990柳州
 


退屈な街だなあと思いながら柳州中を歩き回っていると、とある市場にたどり着きました。服の生地ばかり売っている市場が延々と続くので、こんなに沢山の生地を誰が買うんだろうとか思いながら通 り過ぎると、今度は食品市場になりました。肉とか野菜とか香辛料がずらーっと並んでいます。ふと見るとサルの子供が檻の中にうずくまっています。他の檻にはサルの大人も入っています。下の写 真がそれです。ちょっと見えづらいですけど。

このサル食うのかなあ、まさかなあ。と思いながらさらに進むと今度はワンちゃんがいました。手を縛られちゃってすっかり観念しています。食うんだろうなあ、こいつは。

下の写真が調理後です。アーメン。

市場を出て、さらに歩くと、夕暮れ時になってきました。路の両側には食べ物屋台が沢山出店されています。調理済みのお惣菜を大きなタライに入れて、それを売っています。とても美味しそうなのですが、凄くきちゃなし営業許可とか取ってなさそうだし、どうしようかなあ、食べて見ようかなあなどと思いながら進みます。
すると、前方から大きな黒い水牛が凄い勢いで走って来ます。割と狭い路に屋台が沢山出ているので、牛は回りの屋台をけちらしながら走ってきます。僕は一瞬どうすればいいのか解りませんでした。カメラを取り出す間もなく、呆然としている僕の目の前に迫って来ます。前の人たちがあわてて避けるのを見て、僕もあわててよけました。

牛は僕の左側を通り過ぎると、通行人を一人倒して走り去って行きました。ほぼ正面 からぶつかった通行人はその場にヘタッと倒れ込みました。全然動きません。
牛はというとなおも走り続け、一軒の屋台を木っ端みじんになぎ倒し、路の向こうに消えて行きました。その後を群衆が追いかけて行きます。
さっき轢かれた人はどうしたでしょう。その人の回りにはすぐに人垣が出来ました。でも救急車が来る気配がありません。タクシーが一台来ましたが、病院に運ぶということもしません。するとパトカーが来たので、ホッとしていると、人混みを一瞥すると去って行きました。何しに来たんだ?
轢かれた人は結局友達らしい人に背負われて退場しました。回りを見回すと、牛にけちらされて無茶苦茶になった屋台が修復作業を始めています。地面 に散らばったお惣菜を丁寧にひろってタライに戻しています。やがて何事もなかったようにそのおかずを売り始めました。僕はここで食事をするのはあきらめてホテルに帰りました。そして、もし轢かれたのが自分だったらどうなっただろうと考えながら眠れない夜をすごしました。