お食事中の方は…●1997寧明
 


南寧から列車で4時間の所にある寧明という所には大昔の人が書いた不思議な壁画が残っていて、そこに行くまでの片道2時間の船旅は、この世のものと思えぬ 程の素晴らしい景色を満喫できます。

上の写真のような素晴らしい景色です。
でもそれだけではありません。ここには下の写真のようなちょっと後込みするような景色もあります。

駅前の大通りです。ブタさんはわがもの顔で街の真ん中を闊歩していました。ウシさんも闊歩していました。ニワトリさんも、アヒルさんも闊歩してました。駅前の一等地だというのにすっかりさびれた場末の雰囲気が立ちこめてました。こんな街にまともなホテルはあるのかな?

ホテルはこんなでした。
そこはどこかの企業に併設された招待所で、ペンキ塗りたての真っ白に光り輝く建物でした。フロントで雑誌を読んでいるスゴク暇そうなお姉さんに聞きました。
「部屋はありますか?」
お姉さんはちょっと困ったよな顔をして「どんな部屋が欲しいの?」と言いました。
「一部屋いくらですか?」と聞くと、
「ベッド一つが20元だけど一部屋にベッドが3つあるから60元です」と答えます。
「じゃあそれでいいから、一部屋ください」というと
「どうせ他に誰も客なんか来ないんだからベッド一つにしときなさい」と親切に対応してくれました。
金を払って2階の部屋に向かいます。2階の従業員に鍵を開けてもらうシステムですが、従業員のお姉さんは呼んでもなかなか出てきませんでした。丁度髪を洗っている所だったようです。濡れた髪をタオルで拭きながら出てきて部屋の鍵を開けてくれました。
僕は呆然としました。自分の髪を洗うヒマがあるなら部屋を掃除しろ、と思いました。部屋の床にはタバコの吸い殻とか、お茶のハッパとか色んなものが落ちていました。ベッドを見るとシーツはぐちゃぐちゃ、布団は前に泊まった人のぬ くもりを感じさせる形状で丸まっていました。お姉さんはシーツのシワを直し、布団を四つ折りにたたんで部屋を出て行きました。「シーツを取り替えてくれよー!」と心で叫びましたが声にはなりませんでした。
いったい最後に部屋を掃除したのはいつでだろう。そんなことを考えながらトイレに入ってみました。

ウゲッ!最後に掃除したのは建物が建った時のようです。

クソこびりついてるやん!


その夜、僕は死後硬直のように体を真っ直ぐにして、枕に顔が付かないよう、髪の毛だけ付くように真上を向いて寝ました。布団が肌にさわらないように長ズボンをはいて腕は布団から出して寝ました。微動だにせず、寝ました。このシーツは建物が建った時から洗濯していないんだろうなあ、とか考えながら寝ました。
朝になりました。とても悲しいことに朝のお通じは普段に増して強く・激しく襲って来ました。出来ることなら次の宿に落ち着いてからトイレに行きたかったのですが、状況は逼迫していました。僕はズボンの裾を膝までたくし上げ、靴を履き、靴ひもが地面 に付かないように結び直してこのトイレにしゃがみました。
ちなみに洗面とかもこのトイレでやりましたが、地獄です。蛇口をひねると水が勢いよく出てきます。勢いよく出た水は床に当たって跳ね返ります。それが体に当たるのです。便器に反射した水が当たらぬ ように、体半分をドアの外に出し、上半身だけを前に付き出して何とか顔を洗いましたが、その姿勢は上海雑技団に入団出来るほどの複雑なものでした。